『展示・ものづくり はじめの一歩』は、自分の体験したこと、実感したことの中から発見した内容で企画を立ててまとめた、という意見で、私にとっての「はじめの一歩」なのだ。「こんな本が欲しい」という自分の個人的な実感値からスタートしている。

話がぐっとさかのぼるが、ライターのアシスタントについて最初の頃は、自分の消し方というか、客観的に記事をまとめることを、まずはたたき込まれる。ライターは作家でもなければ、エッセイストでもない。「何者でもないような、おまえの意見なんかお金を払ってききたくない。調べた事実を書け」と師匠に何度も言われながら、ライターとしての文章の書き方を覚えていく。たとえばパン屋さんの記事を書くとして、そのおいしさを個人の感想ではなく伝えるには、現在のパン市場の傾向や、媒体の読者層の認識や好みを踏まえた上で、食感、香り、使われている素材による風味などを具体的に示す。そして、10件のパン屋さんを紹介するなら、特徴がわかるように差別化してまとめる。

仕事として当たり前のことだけれど、ライターになったばかりの私にはそれがたいへんで、つねに意識をしながら自分のカラダにしみ込ませていく期間が必要だった。今では意識しなくても自然にそれを目指しているーーぐらいのスキルは身についた。

そして思うのである。自分らしい仕事ってなんだろうと。

師匠は「おまえの意見なんかききたくない」と言いながら、「40すぎたら自分の名前がたてられないと、ライターとして生き残れないぞ」というのも、繰り返し教えてくれた。

でも、私は何に詳しいわけでもなかった。好きなものはいろいろあっても、そのジャンルで詳しい人はすでにいるし、専門分野を持ってそれだけを突きつめて書いていくって楽しいのかな? というのもピンとこなかった。

流行りに敏感なわけでもないのに、みんながやってることはつまらない、とも思っている。最先端にも、マニアにも、ミーハーにもなりきれない。そんな自分のことを「通ぶりたいミーハー」だとつねづね思っていた。なんて中途ハンパな立ち位置。

(つづく)