“カフェで個展”をテーマにした本の企画には、若かりし頃の経験が、ベースにあった。

私は高校卒業後、2年間のフリーター生活でお金を貯めて、通信制の短期大学に入りグラフィックデザインを勉強した。図工も美術も大の苦手で成績もアヒルだったけれど、憧れていた某出版社の方のインタビュー記事に「編集の仕事に就くにはデザインがわかったほうがいい」と書いてあるのを読んで、進路を決めたのだった。無試験で潜り込んだはいいものの、課題をこなすのにひと苦労。デザインのセンスを身につけるより、やっぱり私はこっち系じゃないのねーというコンプレックスを増大させた3年間だった(1年だぶった)。

楽しくなかったのかと言えば、それは最高に楽しかった。スクーリングではたくさん友だちができて、通信だからか顔ぶれもいろいろなのがよかった。

授業のおかげで写真を撮るおもしろさにも目覚めた。数寄屋橋のニコンで中古のFEとマイクロニッコール55mmF2.8を買い、高感度のフィルムで夜の街を写して卒業制作にした。写真集にまとめる時に、撮影、紙焼き、製本を自分でするわけだが、構成を決める作業にいちばんのおもしろみを感じた。どの写真をどの順番で並べるか、この写真の対抗に何を持っていくか。そんなことで写真の魅力が変わってくるのを目の当たりにしながら、編集の必然性を実感したことは、いまにつながっている。

少しすると私の卒業制作を手伝ってくれた友だち(最近でも一緒に本づくりをしている金子亜矢子)が写真新世紀に入選し、翌年にはHIROMIXがグランプリをとって時代はガーリーフォトブームに。私も自分の写真展とかやってみたいな…と恐れ多いことを考えたりもしたけれど、ほかの人たちに感じる写真の魅力が自分に欠けているっていうのが痛いほどわかったので、いいなあと憧れているだけだった。

(つづく)