自分の写真展を開くなんて大それたことは、夢のまた夢……。

しかし、それから約10年後。
この企画を立てた2005〜2006年頃になると、カフェで個展や手作りイベントをする動きが活発になっていた。

カフェブームがはじまったと言われるのが2000年前後で、代表的な暮らし系雑誌が登場したのが2002年のこと。スローライフがうたわれるようになり、手仕事の良さが見直されはじめ、2006年の秋には「もみじ市」と雑司が谷の「手創り市」が立ち上がっている。

喫茶店の壁で絵を展示するーーのはわりと古典的で、以前からあったと思うのだが、どこか優雅なおじさま、おばさまたちのためのもの、という印象を勝手に持っていた。

けれども今どきのカフェは違う。世代の近いオーナーによる店はとてもすてきだし、カフェで展示をすれば、もし自分の作品目当てのお客さんが数人の友人だけだったとしても、カフェのお客さんに作品を見てもらえるからさみしくない。そして、来てくれる友人にしても、私の作品を見るだけでなく、カフェでおいしいお茶ができたら手持ちぶさたにならないのでは!
(もちろん、カフェだからといって展示をするのはそんなに甘いことではないです、ねんのため)

そんなこんなを企画書にまとめた。カフェだけでなく、雑貨ショップや自宅など、いくつかの場所や方法で、個展やイベントを開いている人たちを集める構成にした。

つけた仮タイトルは「小さな発表会をひらこう」。

無事企画が通り、自分が思うままに取材アポをとって、さまざまな人に会いにいく。
自分がほんとうに興味を持っているテーマで、それを実践している人の話をききにいけるのは、幸せだったし、興奮の日々だった。この本の取材をしている時は、自分の目の前に新しい世界がどんどん広がっていくような感覚があった。

8割がたの取材を終えて、全体の構成の調整をとりながら、ようやく最後のアポが決まった数日後ーー。編集担当から電話がなった。版元が倒産し、社屋が差し押さえられてロックアウトになったという。ロックアウトってなに!? 取材も撮影もほぼ終わっているのに、どうなるの!? 一瞬パニックになりながら、いちばんショックを受けているであろう編集者の気持ちをかき乱してしまわないように、なるべく落ち着いて返事をするので精一杯だった。

(つづく)